2016年10月21日

第一部 青の王 -3-

 沈黙が続くと、セージはおそるおそる手を伸ばしてきた。
「あの……あれ? 怒りました? あっ、そうか葡萄酒を飲んだから眠く……」
「起きている」
 セージの手をつかんで引き寄せた。胸に抱きしめて、横幅の広い椅子の上に仰向けに倒れこむと、視界のきかないセージは驚いて、青の王の身体の上でもがいた。
「じっとしていろ」
 落ち着かせるために背中を叩くと、大人しくなった。ほおに黒い巻き毛が当たってくすぐったいが、そのままにしておいた。
 胸が密着しているせいで、セージが言っていたのがどういうことかわかった。ドンドコ、が適当な形容かは知らないが、たしかに鼓動がうるさくて、破裂しそうなほどの興奮が伝わってくる。
 セージがかすかに身じろぎ、青の王の肩にひたいをこすりつけた。
「目が見えないって……こんなに不安なんですね。もしまたあなたの目が見えなくなっても、俺がそばにいる限り、必ず治しますから安心していてくださいね」
「むやみに力を使うな」
「……だって、もう隠さなくていいなら、あなたのために使いたい」
「見えていないほうが、おまえにはいいんじゃないのか?」
 目隠しを外して間近で瞳を見つめると、セージはまた恥ずかしそうに顔を赤らめた。逃げ出すのを我慢するためか、両手で青の王の服をつかんでいる。
 ほおを撫でてやると、「うぎゃっ」と潰れたかえるのような声を上げた。小刻みに肩を震わせて、泣き出しそうな顔をしたが、逃げなかった。
 甘やかされるのに慣れるには、まだ時間がかかりそうだが、それならゆっくりやればいい。
「服を脱がせてやる。寝室へ行くぞ」
 上体を起こして長椅子から下りた。セージを腕に抱き上げたまま寝室へ向かおうとした。
「待ってください! あの……その前に少しだけ時間をください。準備をしてきますから」
「散々、脱ぐと言っていたのに準備もせずに会いに来たのか?」
 セージは言葉に詰まった。無言でもがく身体を抱きしめた。
「逃げる気か?」
「ち、違います!」
 目を伏せて、言いづらそうに言った。
「あの……式典でも葡萄酒をたくさん飲んでしまって。だから、その我慢できなくて……済ませてきてもいいですか」
 消え入りそうにかぼそい声で訴えた。
「ハリームへ行くか。大人しくしていれば、準備が整うまで待っていてやる」
 青の姫を作らなくなって久しいが、ハリームには常に侍女が控えており、いつ王が女を連れてきてもいいように支度をしている。部屋を清め、調度品を磨き、湯浴みのためにあたたかい湯を張っていた。
 セージには王のあかしである手の甲のティンクチャーがないので、侍女たちに緑の王と気づかれる心配もなく、これまでにも何度かハリームで過ごしていた。
 いつも侍女を下がらせていたので、そう命じる前に彼女たちは自ら姿を隠した。人けのない廊下には、柑橘類のような爽やかな甘い香りが漂っている。突きあたりにある、意匠を凝らした鉄製の扉を開けると、ほのかに湯気があふれてくる。
 青の王の肩に顔をうずめていたセージは、ハッとしたように顔を上げて、部屋を見回した。
「ここ……湯浴みのための部屋ですよね。お願いです、先に……」
「水で流せばわからなくなる」
 床に下ろした。赤くなっている鎖骨を指先で撫でてやると、刺激にぶるりと身を震わせた。
「服を脱ぐ余裕もなさそうだな。脱がせてやろうか?」
「……ッ! 許して。本当にもう限界なんです。こんな場所でするなんて」
「辱められるのは好きだっただろう」
 セージは眉間にしわを寄せて、大きな目のふちに悔し涙をにじませた。これまで辱められてきた経験から、逆らっても無駄だと悟ったのか、服の留め具を外して下履きを脱ぎ始めた。
 ずっとひざを擦り合わせているのは、限界だという言葉が嘘ではないあかしだ。なけなしの抵抗なのか、全裸になっても腹の前で服を握りしめていた。
「限界というのは本当のようだな」
 後ろ手に扉を閉めると、セージは悲鳴を上げた。
「なんであなたまで入ってくるんですか!?」
 面白い反応をするからだ。身体を隠している服をはぎ取った。粗相するところを見られるかもしれない状況でも、性器がゆるく立ち上がっているのが、いかにも快楽に弱い子どもらしくて笑みが零れた。
 セージを抱き上げて湯船に向かうと、水面に足を踏み入れた。段差はあるが、ひざが浸かるくらいだ。
 湯船のふちに腰を下ろして、太ももの上にセージを乗せた。
 部屋でしていたように、向かい合って座らせると、セージはひどくつらそうな顔をした。脚を閉じようと必死にもがくのをながめた。
「あ……もう無理、見ないで」
 子どものような性器がひくついて、先端からは色づいた液体を漏らした。大した量ではなかったので、我慢しているのだろう。ボロボロ泣きながら、両手で涙をぬぐった。
「う、う――っ、ひどい……きらい。ジェント様なんて大嫌い」
 甘ったれた声で嫌いだと繰り返す。
 両手の手首をまとめて高く持ち上げ、軽い身体を浮かせた。尻のかたく閉ざした穴に、指を突き立てると華奢な身体が跳ねた。乱暴にいじると、セージは嬌声を上げた。
 これまで自分で準備することがほとんどだったのだろう。指を増やして、内壁を擦ってやると、行為に慣れていない生娘のように抗おうとした。
「やだ、やだあ……! 離して!」
 強引にいじると、小刻みに手足を震わせながら、白濁を滴らせた。青の王の腹にもかかったのを見て、眉尻を下げた。
「ご、ごめんなさい。汚しちゃった……」
 謝り続けるセージをながめながら、案外、甘やかすのは難しいのかもしれないと気が付いた。
「お願い。汚してしまったところ、くちで綺麗にさせてください」
 奴隷根性が染みついた子どもは、上目遣いに懇願した。誰にしこまれた癖なのかと、想像するだけで嫌な気分になる。
 ひざから下ろすと、セージは四つん這いになって、胸まで湯船に浸かった。初めは服に飛んだ精液を舐めていたが、うっとりした顔で、服の上から性器のかたちを舌でなぞった。帯の留め具に手をかけて、青の王を見上げた。
「ここも舐めたらだめですか……?」
 服をはだけさせると、セージは待っていたように、性器をのどの奥深くまで飲み込んだ。先端ばかりを舐めてみたり、根元にも舌を這わせた。
「ん……っ、んん」
 赤い舌も、片手でつかめる黒い頭も、どこもかしも小さくて支配欲が満たされた。強く吸い付かれて脚が強張った。セージは前兆を感じ取って、またくちで竿を銜えた。
 そのまま深くのどの奥まで飲み込んで、きつく締めつける。先端を締め付ける感覚は、尻に入れるよりも容赦がない。セージは強要されたわけでもないのに、目じりに涙を浮かべてこちらを見上げてきた。娼妓並みに手慣れているくせに、外見はあどけないので、必死に奉仕しているように見えてしまう。
 嗜虐心を煽るためにそうしているのかと疑いたくなる。ひたいをつかんで、小さなくちから勢いよく引き抜いた。
「私を苛立たせたいのか? 苛つかせて、乱暴にされたいのならそう言え。泣かせてやる」
 放り出された子どものような顔で、セージはしゃくりあげた。のろのろと、くちの端からこぼれた唾液を手の甲で擦って、怯えた声で言った。
「わかり、ません。あなたに優しくされたらうれしい、けど、虐められたい気も……します。こういうの、甘えてるって言うんでしょうか?」
 話なんか通じない。セージの頭から手を離すと、とろけた顔でまた銜えて奉仕しだした。射精すると、待ちわびていたようにのどを鳴らした。くちの端から精液をあふれさせて、もったいなそうに顔に飛んだ白濁さえも、熱心に舐めた。どう育てれば、ここまで性奴に向いている性格になるのか、いっそ感心する。男が悦ぶように、振る舞うのが当たり前に身に付いている。
 セージは湯から上がると、ひざに乗ってきた。
「くちに出してもらうだけじゃ足りない。おなかの中にもください」
 青の王の性器を手で擦ると、またがっている脚のあいだに導いた。狭い穴に性器を飲み込むと、身体を震わせた。
「ああ……っ」
 さして解されていない穴が、きつく締めあげてくる。セージは半分まで強引にねじ入れてから、湯船のへりを逆手につかんで、胸をそらしながら身体を後ろに傾けた。
 腰を揺すってやると、甘ったるい声を上げた。
「その体勢が好きなのか?」
「だって……ここを擦ると、ジェント様のがすごく硬くなるから……気持ちいいですか?」
 裏筋にあたるように、腰を揺らめかせた。
 どっと疲労感がまして、目の前がかすんだ。セージは無意識に抱き合った相手の力を奪おうとする。普段は気をつけているらしいが、抱き合っているとたがが外れて、いくらでもむさぼろうとする。
 青の王の視力は、自身の持つ赤の獣の再生能力によって支えられていた。それもたいして強くはなくて、セージに力を奪われると、体力だけでなく視力まで削られる。
 抱き合うと、身体に害があるのは青の王だけではない。セージは奪った力を持て余していて、強すぎる神の力に身体をむしばまれている。神の血には身を滅ぼすほどの副作用があり、早世する王も多かった。
 それに気づいて、セージと距離を置いた時期があったが、結局は抗えなかった。抱けばセージの寿命が縮むとわかっても、さわるのを止められなかった。
「おまえはどこを突かれるのがいい?」
「ジェント様の好きなようにしてもらうのが、一番気持ちいいです」
「強情だな。甘えてみろ。気持ちよくしてやる」
 思わず笑みを浮かべると、セージは急に正気に戻ったように目を見張って、腕で顔を隠した。
「抱いてもらえるのに、あなたがそうやって、甘やかしてくれようとするだけでうれしいのに、あとなにを願えばいいんですか?」
 脇の下に手を入れて、身体を持ち上げた。逃げられないように、両手で太ももをつかんで引き寄せた。下肢で立ち上がっているものをくちに含むと、セージは悲鳴を上げた。
「大人しくしていろ。暴れると噛むぞ」
「き、汚いのに……ジェント様はこんなことしたらだめです!」
「湯で綺麗にしたんだろう?」
 萎えかけた性器をなめ上げると、「いやっ!」と泣き出した。気持ちがいいだけのはずが、大粒の涙をこぼしながら、嗚咽を漏らす姿はいじめられたふうにしか見えない。
 奉仕するのがあたりまえで、奉仕されるのは抵抗があるのか、心底、いやがっているようすで抵抗した。
「もうだめ、出ちゃう……出ちゃうから放してぇ」
 ぐしゃぐしゃの顔で睨んでくるのは、媚びた上目遣いよりも好ましかった。くちを離してやると、セージはがくりと膝を追った。腕の中に抱きしめると、ぶるりと身体を震わせて射精した。
「ふ、んぅっ」
 まき散らした液体が、青の王の腹にもかかる。しゃくりあげてぐずるのをあやしながら、「他に何をされてみたい?」と尋ねた。
「……こんなの、してなんて頼んでいません。俺はっ、いつもみたいにしてくれるだけでいいのに!」
「おまえをいじめるのにも飽きた。たまには恋人らしく振る舞って、私を楽しませてみろ」
 セージはぽかんとしたように、「こいびと」と繰り返した。
「自覚させてやる」
 てのひらでほおを包み込むと、顔を近づけた。深くくちづけると、抱いている身体からくたりと力が抜けた。キスの好きなセージが、自分から求めるようになるまで待ってから、濡れた黒髪を撫でてやる。
 小さな尻に指を這わせても、気づかずにキスに夢中になっていた。指を押し込んで、ゆっくりと中をかき回すと、締め付けてきた。
「あ、今はだめっ」
「嫌ならこちらに集中していろ」
 くちびるを合わせて舌を入れる。指を増やして穴をいじってやると、出したばかりなのにもう性器が立ち上がり、腰を揺らし始めた。 反応のいい場所を責め立てると、身体が強張った。
「そこ、そこはやめて! くらくらするからっ。お願い、抜いてください」
「恋人らしい気分になってきたか?」
 耳元でささやいた。
「そんなの知りません。恋人なんて、わからないのに急にたくさん、やらないで」
 あざとい泣き顔で訴えるのを無視して、指を増やした。じゅうぶんにやわらかくなったのを確かめて、指を引き抜くと、かわりに屹立したものを押し込んだ。
「ひ、うっ」
 腰をつかんでずぶずぶ飲み込ませると、セージは脚を痙攣させた。生ぬるい内壁が、痛いほどからみついてくる。
「動かすぞ」
 強引に抜き差しすると、セージは短い嬌声を上げた。恥ずかしいのか、声をこらえようとする。
 繋がったまま体勢を入れ替えて、仰向けに押し倒した。きつく結ばれたくちびるに、親指をねじ入れてくちを開かせる。腰を打ち付けると、甘ったるい声で鳴いた。
「ん……んん」
 とろけきった顔で、口内に突っ込まれた親指を、舌でいやらしくなめ続ける。あきれて指を引き抜いた。
「奉仕は忘れて、気持ちよくなっていろ」
 セージはしくしく泣き出した。
「あなたが優しいと、こわい」
 今日もまったく意思の疎通ができそうにない。いじめられて弱り切った痴態を見せつけられると、手酷く抱きたくなるのを止められなかった。
posted by eniwa at 00:00| トリロジー